サテライト企画:CAMPベルリンアーカイヴ展
アーカイブ展
会期:2008年11月1日ー11月10日
会場:広島市立大学芸術資料館
本展覧会は、2008年2月にドイツの首都ベルリン市で「Migration(移住・移動)」をテーマに開催された展覧会「CAMPベルリン」を再構成したもので、2008年11月に広島市立大学芸術資料館で開催された。
「CAMPベルリン」は、広島市立大学とベルリン・ヴァイセンゼー美術大学を中心とした若手作家が参加し、両都市がもつ固有の歴史や社会問題などを、アートを通して考察する機会を与えた展覧会であった。アーカイヴ展では、ベルリンで実際に展示した作品15点を並べ、展覧会の様子を克明に記録したドキュメント映像と、参加作家のインタヴュー映像を新たに付け加えた。
本展は、ベルリンで「CAMPベルリン」を見ることのできなかった人々に展覧会の概要を伝えると同時に、広島とベルリンの若手作家の交流や大学間の交流の様子を、映像などを通して見せる展覧会となった。また同時期に、被爆建造物である旧日本銀行広島支店で、同テーマのもと「CAMPベルリン」の継続企画である「CAMPヒロシマ」を開催し、「現代美術移住プロジェクト(Contemporary Art Migration Project)」であるCAMPの一連の企画を広く一般市民に提示する機会となった。(I.M.)
1日中藝術館開館記念特別展 イルハ・グランデ ー愛ー 展
「Migration(移住・移動)」をテーマに開催された企画「CAMPヒロシマ」は、会場である旧日本銀行広島支店の一角に柳幸典企画室による《peace scope》を展示した。それは、市内吉島地区に現存する遊休施設である旧中工場の1/8の縮尺模型であり、内部空間を精密にトレースダウンした作品である。
その建造物の内部で開催されたのが、極小の展覧会「ilha grande」である。「ilha grande」とは、ポルトガル語で「広大な島」を意味し、広・島を直訳した言葉である。これは、広島に滞在し制作活動歴のある若手アーティストの作品により、愛と平和の観点から広島を見つめなおし、再考を促す展覧会であった。
内部に設置された作品を幾つかみ見ていこう。天井から吊り下げられたガジュマルは、荒神明香が購入し、土を取り除き、根幹をむき出しにした作品《一連の流れ》である。戦争被害を大きく受けたヒロシマと同様、戦場となった沖縄の歴史を見続けたガジュマルを想起させ、空間内でひときわ力強く存在する。岩崎貴宏の《平行接続》は、旧日本銀行広島支店が被爆直後に改修工事を行った際の修繕用足場をシャープペンシルの芯により再現した。そこに生きた巨大なクモを持ち込み、巣をはらせ、その糸による広島の「救済」を試みている。友枝望の《見者》は、地産の伝統工芸品である宮島しゃもじを使用し、会期中にそのしゃもじから鹿を削り出した作品である。荒瀬哲也の《無題》は、市の繁華街である流川地区を撮影し、過剰なエフェクトを施し、表層での愛と深層での愛を入り乱れさせて、カオスを創出している。旧中工場1/8モデルを制作した中島優による《傍観者》は、1/8モデルをさらに小さくした1/80モデルである。焼却ピットにはあふれんばかりの電飾が明滅しており、遊休施設のありようにメッセージを発している。
「ilha grande」は、展覧会の中に展覧会が内包される特殊な展覧会であった。縮小されながらも重厚な《peace scope》の内部で開かれたこの展覧会は、遊休施設の利用に関するプレゼンテーションとなっており、実物大での利用の可能性を提示したものであった。
イルハ・グランデ ー愛ー 展
キュレーション:友枝望
参加作家
荒瀬哲也
池田和子
入江早耶
岩崎貴宏
荒神明香
中島優
友枝望
米倉大五郎
参加アーティスト
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